保守点検
点検区分
維持保全の考え方
マンションやビル建築物の維持保全は、下記の法規があることを理解することから始まります。
1.ビル管理法(正式名称:「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」)
- 多数の人が使用又は利用する大きな建築物を「特定建築物」として,その維持管理について法に準拠し、環境衛生上の管理基準を満たさなければなりません。アパート・マンション等共同住宅は、特定用途とされていません。
- 特定建築物の定義(床面積と用途において次のように定義されています)
- ▽床面積:3,000㎡以上
- ▽用途として興行場、百貨店、集会場、図書館、博物館、美術館、遊技場、店舗、事務所、学校教育法第1条に規定する学校以外の学校、旅館・ホテル又は宿泊所
- ▽工場、自然科学研究所・病院などの特殊環境にあるものは除外倉庫、駐車場は、特定用途に付属する場合を除いて除外(付属する場合は含まれる。)
- ▽建築物環境衛生管理基準
- a.空気調和設備・機械換気設備空気環境の測定、設備の点検・清掃
- b.給水設備(飲用水・雑用水)飲料水の水質検査、貯水槽施設の検査・清掃
- c.排水設備排水機能の維持、補修及び清掃
- d.清掃及び廃棄物管理日常・定期清掃
- e.ねずみ等の発生及び侵入の防止並びに駆除6ヶ月以内毎の点検と措置
2.建築基準法
- 建築物の維持管理に関し建築基準法では、維持保全(第8条)及び報告、特殊建築物定期調査報告(第12条)が定められています。
- 特殊建築物の定義
- ▽劇場、百貨店、ホテル、病院、共同住宅、遊戯場、事務所など不特定多数の人が利用する建物。
- ▽一定の用途・規模以上の特殊建築物には建物(1回/3年)設備(1回/年)の定期的な調査報告が義務付けられています。(各地域を管轄する特定行政庁により詳細が異なります。)
- 建築物調査項目
- a.敷地関係-建築物の沈下、地盤、非難通路及びその管理状況 b.構造関係-基礎、主要構造部、その他の構造部 c.防火関係-防火区画、防火戸等、内装 d.避難関係-廊下、階段、出入口その他の避難施設、非常用の進入口、排煙口 e.衛生関係-給排水、採光・換気、浄化槽 f.その他
- 建築設備調査項目
- a.換気設備-換気扇の性能検査等 b.排煙設備-排煙口の風量測定等 c.非常用照明装置-照明器具の性能検査等 d.給排水設備-水質検査等保守管理の状況
建築物のメンテナンスの種類とポイント
建築物は誕生の時点からそれを構成する部品や部材は、時間とともに劣化をします。よって建物の性能・機能を保つため、適切な維持保全が必要となります。
- 【維持保全の目的】
- 1.機能を満足させて長く使用に耐え得るようにする
- 2.財産としての保全をする。
- 3.日常の手入れにより大修繕を未然に防ぎ、不経済支出を防止する。
- 4.災害を未然に防ぎ、良好な居住環境を確保する。
- 5.法令で定められた保全(建築基準法・消防法・ビル管理法)
メンテナンスの種類
- 1.清掃衛生管理
- 日常清掃、定期清掃、空調、照度、貯水・貯留槽清掃、残留塩素測定等
- 2. 機能管理(設備)
- a.給水装置(揚水ポンプ式・加圧式・蓄圧式・増圧式)の定期点検
- b.受水槽・高架水槽の損傷や漏水のチェック及び各装置作動状況の定期点検
- c.排水装置(排水ポンプ、ポンプ制御盤)の定期点検
- d.排水設備(槽内部の汚泥状況、電極保持器の異常チェック)の定期点検
- e.湧水・雨水槽の点検
- f.配管(給水・排水)の異常、漏水の点検
- g.電気設備(遠隔監視装置、給排水設備の動力盤、共用分電盤、照明等)の定期点検
- h.換気設備の点検
- i.テレビ共聴設備(増幅器・分岐器)の点検
- j.消防設備の法定点検
- k.エレベーター設備の法定点検
- l.特殊建築物定期調査報告(設備)
- 3. 機能管理(建築)
- a.屋上防水層(亀裂、剥離、膨れ)の定期点検・劣化診断
- b.屋上排水口、雨水縦管の定期点検
- c.建物外周(仕上げモルタル、外壁タイルの剥がれ・浮き等)の点検・劣化診断
- d.鉄部・鋼製建具の点検・劣化診断
- e.コーキング・シーリングの点検・劣化診断
- f.外構工作物(駐車場施設、道路、側溝、遊具)の点検・劣化診断
- g.特殊建築物定期調査報告(建築)
維持保全は例えれば人間の健康診断と同じです、病気を未然に防ぐ事を建物で考えた場合、予防保全といえるでしょう。建物を健全な状態に保つ為にも、長期の視野に立った修繕計画と年間メンテナンス計画の策定、竣工図面等の整備や各メンテナンス記録の整備が重要なポイントとなります。